ゲンビどこでも企画公募2011

募集期間:2011年6月1日(水)〜7月20日(水)
展覧会:2011年9月17日(土)〜10月10日(月・祝)

■ 応募総数 107件
■ 特別審査員 秋山祐徳太子、谷尻誠、松井みどり

入選作品・展示風景


岸かおる《cover》
秋山祐徳太子賞


坂井存《放射性重い荷物》


シェアフル《AIR SHODOU》
松井みどり賞


ジェネヴィーヴ・シュア《The Night’s Forest》


ソース・オーガニゼーション・ネットワーク《Game of Space》
観客賞


竹之下亮《うたをください》


中村潤《kamiwoamu kamiwomaku iriguchi》
谷尻誠賞


増子博子《届けるイメージ》

特別審査員・講評

秋山祐徳太子(美術家)

私は少人数での審査はしたことがあるが、このたびの審査はあまりの多くの応募者にとまどってしまった。しかし時間をかけて進めていくうちに、それぞれの純粋な熱意が伝わってきて、これはいい経験をさせて頂いたと思う。それぞれのアイデアは実現不可能な人もいたが、それも若さの勢いでいいと思うし、挑戦と実験もよしと、うれしい気分にさせてもらった。広島の古地図を起点に展開した知的なものや、日常誰でも使用するトイレットペーパーのコミカルなリズム感や、なんだか人が空から飛んできそうなスケールの発想、扇風機を編み物で包んでしまうどころか、原発の建屋まで包んでしまおうという、温暖梱包芸術。いやー、実に楽しかった。皆さんの素晴らしい情熱をありがとう。私も力を頂きました。

1935年東京都生まれ。ブリキによる彫刻作品や、《ダリコ》、東京都知事選出馬をはじめとする数々のパフォーマンスで知られる美術家。

谷尻誠(建築家)

はじめてアート作品の審査をさせて頂き、とても魅力的な案があると同時に、課題を見つける事が出来たように思います。建築を見るのと同じように、それぞれの作品の奥にある、思考やそこに辿り着くまでのプロセスまでもを、読み解いた上で作品を評価したいと考え、作品と向き合うことにしました。
アートという解釈を拡げてくれる作品には、やはり新しい建築に可能性を感じるように、惹かれるモノがあったと思います。体験をデザインしたものや、プロセス自体が作品であったり、多様な世界感を見せて頂くことが出来ました。
同時に考えさせられたのは、作品を伝える上でのプレゼンテーションに対する意識の低さが目につきました。
どう自分の作品を私たち審査員に伝えるのか、どう見て貰うべきなのか、そう言った伝えるという意識が作品に対する意識と近づいて行くことが、もっと必要であるように感じました。
思考からモノが生まれ、社会に伝えて行くまでもが作品としたならば、そこに介在する全ての要素を等価に考える事、そんなことがとても大切なのではないかと考えた審査の時間でした。
とはいえ力作も多く、ジャンルは違えどもとても良い刺激を頂いたこと、心から、感謝申し上げます。

1974年広島県生まれ。住宅、商業空間、ランドスケープ、プロダクト、アートのインスタレーションなど幅広く活躍する、今最も注目を集める若手建築家。サポーズデザインオフィス代表。

松井みどり(美術評論家)

今回は、絵画的表象や劇場的インスタレーションは少なく、放射能や戦争など知らないうちに環境を冒していく要素や、人間と動植物が共有するフラクタルな形やプロセス、主観と客体化の間で変容し続ける自意識や身体感覚の境界など、ひとつの論理やイメージでは掴みきれない複雑な主題を、アクション、映像、建築的装置などを通して、様々な視点や断面から検証し、それらが接触する人や事物との影響関係などを含めて視覚化・実体化しようとする作品が多く、公募者の高いコンセプチュアル性と関係性への関心を感じました。私自身は、観客が主な行為者となり、知覚の主体となる環境を提供する作品、なかでも観客個個人の身体や運動や感覚のゆらぎによってその効果に様々な差異を生じさせる可能性を多く示唆する作品に、高い評価を与えました。身体や事物の個別性の把握も、合理的なプランや形式に依存するのではなく、断片や影、動きや位置や大きさの変化に従って変わる印象を重視する作品を評価しました。

海外の学術誌、企画展カタログに同時代の日本の現代美術の潮流や作家について論文を多数寄稿するなど、日本を代表する美術評論家として日本のアートシーンを精力的に海外に紹介している。

ページのトップへ戻る