松江泰治 地名事典

  • 《ATH 12319》2018

  • 《PUQ 141133》2015 個人蔵

  • 《WASHINGTON 2000 #79》2000

  • 《HAM 18249》2012

展覧会概要

会期
2018年12月8日(土)– 2019年2月24日(日)
開館時間
10:00 – 17:00(入場は閉館の30分前まで)
休館日
月曜日(ただし、12/24、1/14、2/11は開館)、12/25(火)、12/27(木)– 2019/1/1(火)、1/15日(火)、2/12(火)
観覧料
一般1,000円(800円)、大学生700円(600円)、
高校生・65歳以上500円(400円)、中学生以下無料※( )内は前売り及び30名以上の団体料金
主催
広島市現代美術館、中国新聞社
特別協力
株式会社 フレームマン
協賛
株式会社 カラーサイエンスラボ、
株式会社 ニコンイメージングジャパン
協力
TARO NASU
後援
広島県、広島市教育委員会、広島エフエム放送、尾道エフエム放送
松江泰治(1963年、東京都生まれ)はこれまで、世界各地へ赴き、撮影した土地を写真作品として発表してきました。松江の選ぶ被写体は、岩肌が剥き出しの山間地、木々の生い茂る森林地帯、高層ビルが建ち並んだ都市、古い家並みの広がる街など、あくまでその土地の表面、いわゆる地表です。撮影においては、構図に地平線を含めない、被写体に影が生じない順光で実行するといったルールを自らに課すことで、一貫して、写真本来の性質である平面性を追求してきました。そうすることで、コントラストや奥行き、中心と周縁との区別を周到に排除し、写り込んだすべての要素が等価に扱われた画面が生み出されます。
1980年代からモノクロ写真を発表してきた松江は、2005年、初のカラー写真集を発表しました。撮影機材や現像方法など、テクノロジーの進歩とともに絶えず変化する新技術を積極的に取り入れながら、新しい写真を求めて挑戦を続けています。松江の作品タイトルには地名や都市コードが付けられています。地名のデータベースを意味する「地名事典 / gazetteer[ギャゼティア]」と題した本展は、活動の初期から現在に至るまで、世界中の土地の名前を写真というかたちで収集してきた作家の仕事を体系的に紹介する、初の回顧展となります。

作家紹介

松江泰治TAIJI MATSUE

1963年東京都生まれ。1987年、東京大学理学部地理学科卒業。2002年、第27回木村伊兵衛写真賞受賞。

小学生の頃から時刻表を片手に列車を乗り継ぎ各地を旅する。14歳で46都道府県を制覇。その頃からカメラに興味を持ち現像も自ら行う。19歳で森山大道の写真集『光と影』(冬樹社、1982年)に出会い魅せられ、後に森山の元に通い続け、徹底的に写真と向き合う決心をする。大学では大型電子計算機を使って人工衛星(LANDSAT)から送られる地球の画像処理に没頭しつつ、写真の撮影も1日も欠かさなかった。綿密にリサーチした膨大な情報をもとに緻密な計画をたて撮影に臨み、各地で様々なアクシデントに見舞われながらも世界中に赴き地名の収集に邁進する。

作品紹介

Hashima 1983

2017年

1983年の夏、九州へ旅した松江は軍艦島に渡る。160点で構成されるこの作品は、旅のドキュメントである。撮影された写真は、その当時一枚もプリントされることはなく、2017年に初めてデジタル化され、発表された。この頃はまだ技法が定まっておらず、さまざまな撮影が試みられている。

『Hashima』

出版年:2017

出版社:月曜社

《Hashima 1983 001》2017

TRANSIT

1985年

写真家・松江泰治の処女作。TRANSIT(トランシット)とは、精密に土地を測る測量機器のこと。とにかく毎日撮影することを自らに課し、街中を歩いて小型カメラで撮影。その結果、太陽を背にして撮るかぎり影がまったくなくなって、フレームの中で立体感が失われ、ものの表面だけが新しく生まれるということを発見するに至る。松江作品の基本形は、このシリーズで確立したといえる。

《TRANSIT 06》1985 個人蔵

gazetteer

1990年–

世界の地名シリーズ。gazetteer(ギャゼティア)とは、「地名事典」の意味。各作品には、地名がタイトルとして付される。松江が意識して地名を収集しはじめたのは94年からで、自ら運転する自動車で撮影場所(=地名)を徐々に増やしていった。松江はしばしば空撮写真家のように思われるが、彼の撮影の9割は地上に三脚を立てて大判で撮られている。

『hysteric MATSUE Taiji』

出版年:2001

出版社:ヒステリックグラマー


『TAIJI MATSUE』

出版年:2003

出版社:うげやん


『gazetteer』

出版年:2005

出版社:大和ラヂヱーター製作所

《NAMIBIA 1995 #18》1995 東京国立近代美術館蔵

CC

2001年–

世界の都市名シリーズ。CCとはCity Code(シティ・コード)の略で、各作品には、記号のような都市コードが付される。世界の地名を収集し続けるうちに、大事な地名=都市名が欠けていることに気づき、2001年から都市を撮りはじめた。最初に撮影した都市はアテネ(ギリシャ)。本質的にはCCもgazetteerも同じ、松江の制作の根底をなす、地名の収集である。

『CC』

出版年:2005

出版社:大和ラヂヱーター製作所

《CHI 0254》2002 個人蔵

JP-

2004年–

日本の都道府県を空撮するシリーズ。各作品には、ISO3166-2規格によって定められている、各都道府県コードが振られる。JP-と銘打って制作に臨んだ最初は2005年の《JP-22》(静岡県)である。当時はカラーフィルムで撮影していたが、この作品からカラーフィルムをデータ化し、デジタルカラー制作に着手している。デジタルカメラの導入は、2012年から。

『JP-22』

出版年:2006

出版社:大和ラヂヱーター製作所


『jp0205』

出版年:2013

出版社:青幻舎


『JP-01 SPK』

出版年:2014

出版社:赤々舎


『JP-34』

出版年:2019

出版社:月曜社

《JP-34 02》2015 広島市現代美術館蔵

cell

2007–08年

松江によって、最小単位、最小区画という意味で「cell」と命名されたこのシリーズは、いわばトリミング実験である。画面の中に偶然入り込んだこれらの人々は、膨大な数のネガから採集される。松江の遊び心が垣間見られるシリーズ。

『cell』

出版年:2008
出版社:赤々舎

上段左から《27SVQ》2007 / 《11MHG》2007 / 《31EC》2007 / 《38LON》2008

makieta

2007年–

エクアドル共和国の首都キトにある博物館で、キトの街の模型に偶然出会い、まるで空撮のようだと模型を撮影したことがきっかけとなった。makieta(マキエタ)とはポーランド語で、「模型」の意味。撮影の対象は、基本的に都市(の模型)のため、作品タイトルにはCCと同じく都市コードがつけられる。

《MCT 17551》2012

LIM

2010年–

世界の墓地にフォーカスしたこの作品群は、CCの部分集合であり、特に、ペルー共和国の首都リマを象徴とする墓地の分類を指す。「墓地」は、松江が学生時代、人工衛星から送られてくるデータの画像処理に熱中していた頃から追い続けてきたモチーフである。都市の中でも墓地は、その構成要素(主に石と森)によって他所と異なったスペクトルを示しており見つけやすいという。2013年に訪れたペルー(リマ=LIM)の墓地が契機となり、2015年、世界の墓地だけに特化した作品集『LIM』を発表する。

『LIM』

出版年:2015
出版社:青幻舎

《LIM 35040》2018

pan

2017年–

panは、パノラマの語源である「pan-(すべての)+horama(光景)」に由来する。ここでは、パノラマとは技法の呼称であり、デジタル技法の発展系を意味する。デジタル合成による超高精細な大型作品が、pan技法に分類される。これまで撮影旅行には必ず大判カメラを帯同していたが、2018年から大判カメラの同行を打ち切る。これまでの大判カメラとフィルムに代わる制作として、新たに挑戦している技法といえるだろう。今後の新作も期待される。

《TYO 3525》2017 東京都現代美術館蔵

展覧会をより楽しむために

1黒白とカラー、ふたつの作品の違い

松江作品には下の2点のように、同じ構図で黒白とカラー、別のフィルムで撮影した作品があります。プリントの際は、それぞれの特性を活かすべく細かい調整がおこなわれます。本展では並べて展示はされませんが、この双子のような作品を見つけて違いを楽しむのもまた一興です。

《ATH 0106》2001 個人蔵

《AHT 12319》2018

2見ていなかった情報が見えてくる

高解像度で画面全体に等しくピントのあった「gazetteer」や「CC」(写真左)の写真には、視覚では捉えきれないくらい膨大な「情報」が写りこんでいます。その「情報」の中から松江が「人」に注目しピックアップしたのが「cell」(写真右)シリーズ。偶然作品に入り込んだ人々に出会うだけでなく、ピックアップ前の写真も展示室で探してみてください。

《SYD 20119》2012

《01SYD》2007

《ALPS 33026》2011 the amana collection

《21AT》2007

3写真が動いてる?

新しい写真の姿を求めて日々挑戦を続ける松江泰治。道具が一体化しスチルカメラで動画が撮れるようになったことで新たに加わったのがビデオ作品です。画面の大半を占めるほとんど動かない景色の中で、点のように動くアルパカ。この「動き」が松江作品を構成するこれまでにない形の「情報」といえるでしょう。

《AYACUCHO 132681》2018

作品画像、動画はすべてCourtesy of the artist, TARO NASU ©TAIJI MATSUE

関連プログラム

対談1「本質を究める道」
12月8日(土)14:00 – 16:00

講師:
松江泰治×清水穣(写真評論家)
会場:
地下1階ミュージアムスタジオ
定員:
120名

*申込不要、要展覧会チケット
*当日10:00より受付にて整理券配布

清水穣(しみず・みのる)

1963年東京都生まれ。美術評論家、写真評論家、同志社大学教授。
1995年、第1回重森弘淹写真評論賞受賞。定期的にBT美術手帖、ART iTなどの媒体に批評を掲載。著書に『白と黒で―写真と……』(2004)、『写真と日々』(2006)、『日々是写真』(2009)、『プルラモン 単数にして複数の存在』(2011)(すべて現代思潮新社)など。
これまでに、松江泰治の作品集『JP-22』(2006、大和ラヂヱーター製作所)、『松江泰治 世界・表層・時間』(2012、IZU PHOTO MUSEUM)、『jp0205』(2013、青幻舎)に寄稿。


対談2「表層を彷徨う旅」
2019年1月14日(月・祝)14:00 – 16:00

講師:
松江泰治×森山大道(写真家)
会場:
地下1階ミュージアムスタジオ
定員:
120名

*申込不要、要展覧会チケット(半券可)
*当日10:00より受付にて整理券配布


Photo by Alfredo Jaar

森山大道(もりやま・だいどう)

1938年大阪府池田市生まれ。デザイナーから転身し、岩宮武二、細江英公の助手を経て、1964年にフリーの写真家として活動を始める。1967年『カメラ毎日』に掲載した「にっぽん劇場」などのシリーズで日本写真批評家協会新人賞を受賞。
近年では、ウィリアム・クラインとの合同展(2012–13、テートモダン、ロンドン)、「DAIDO TOKYO」展(2016、カルティエ現代美術財団、パリ)ほか、国内外で数々の大規模な展覧会を開催。また、2012年には、国際写真センター(ニューヨーク)Infinity Award功労賞を受賞するなど、世界的に高い評価を受けている。


作家によるスペシャル・ギャラリートーク
2019年2月9日(土)14:00 – 15:30

講師:
松江泰治
聞き手:
本展担当学芸員

*要展覧会チケット、事前申込不要


学芸員によるギャラリートーク
12月9日(日)、2019年1月26日(土) いずれも14:00 – 15:00

*要展覧会チケット、事前申込不要


アートナビ・ツアー
毎週土曜日、日曜日、祝日、2019年1月2日(水)、3日(木)
各日11:00 – 11:30、14:00 – 14:30(対談、ギャラリートーク開催時は除く)

*要展覧会チケット、事前申込不要

展覧会カタログ

これまでの全シリーズを網羅した158点を掲載。
撮影地でのエピソードを盛り込んだ年譜も!

松江泰治ハンドブック

図版

  • Hashima 1983
  • TRANSIT
  • gazetteer
  • CC
  • JP-
  • cell
  • LIM
  • pan
  • makieta
  • 測量の位置 - 松江泰治、現在までの写真
    倉石 信乃
  • 一意専心 松江泰治作品のこれまでとこれから
    角 奈緒子(広島市現代美術館学芸員)
  • 松江泰治 年譜
価格:
2,808円(税込)
頁数:
200頁
仕様:
A5判/日英バイリンガル
翻訳:
クリストファー・スティヴンズ
デザイン:
乗田菜々美
発行人:
小寺規古
発行所:
ELF
印刷・製本:
株式会社オノウエ印刷
プリンティングディレクション:
花岡秀明

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