概要
広島市現代美術館は1989年の開館以来、作家の創作活動を支援することを目的に公募展を実施してきました。
同時に、来場者にとっても魅力的な展覧会となることを心がけ、これまで「公募『広島の美術』」「新・公募展:Re-Act」「ゲンビどこでも企画公募」「ゲンビ『広島ブランド』デザイン公募」など、様々なかたちを試みてきました。
このたび美術館のリニューアルオープンにあわせて、公募展も「Hiroshima MoCA FIVE」としてリニューアルします。審査により選出された5名/組のアーティストには、美術館によるサポートを受けながら、展覧会への出品作を制作・展示していただきます。
募集内容
テーマ
「リニューアル」
◯Hiroshima MoCA FIVE 23/24のテーマは「リニューアル」。更新、再生、復活など、言葉の解釈は自由です。テーマに応じた意欲的な表現を期待します。
◯作品プランのジャンル(平面、立体、映像、インスタレーション、パフォーマンスなど)や素材(木、金属、陶など)は問いません。
◯展覧会の開催期間を通じて展示可能な作品であること。パフォーマンスや演奏はその限りではありませんが、少なくとも展覧会初日(3月30日)には上演することとして、その後も来場者が常時鑑賞できる工夫を検討してください。
◯応募できるのは1名/組につき、1点とします。複数点から構成された組作品での出品も可能です。
◯他の公募展に応募していない未発表のオリジナル作品に限ります。
◯入選作品の展示場所は、展示室B-1および回廊、アプローチプラザです。
◯当館ウェブサイトから募集要項、応募用紙をダウンロードし、記載内容を確認のうえ、必要な書類等をE-Mail または郵送にて応募してください。
2023年10月24日(火)—12月18日(月) 17:00(期間内必着)
〒732-0815 広島市南区比治山公園1-1
広島市現代美術館 Hiroshima MoCA FIVE 担当
E-mail: hiroshimamocafive2324@gmail.com
◯広島市現代美術館と特別審査員1名により審査を行い、入選を決定します。
特別審査員 藪前知子(東京都現代美術館学芸員)
◯選考結果は、本ウェブサイトにて2024年1月23日に発表します(入選者には個別に連絡します)。
◯入選5名/組
入選者各人(組)に活動奨励費として40万円を支給します。
◯広島市現代美術館賞/特別審査員賞
入選者による作品設置および上演が完了した時点で、広島市現代美術館賞と特別審査員賞を各1名/組ずつ決定します(賞金:20万円)。
◯展覧会の会場風景(記録写真)をまとめて、pdfファイル等で提供します。
◯作品の配置場所、展示方法、その他については、魅力的な展覧会をつくるために、美術館学芸スタッフとやり取りをしてもらいます。
◯搬入・搬出および展示・撤収は必ず作家本人か、本人に代わる人が行ってください。ただし作品設営や展示作業については、美術館ができる限りのサポートをします。
◯額や台座、映像機器など展示の際に必要となるものは、原則として入選者が用意してください。
◯作品制作および設置作業のための広島滞在については、宿泊先を斡旋できる場合があります。事前にご相談ください。
◯ゲストハウスakicafe inn、ゲストハウスCOCO広島
入選作品
広島市現代美術館館長、副館長および学芸員による館内審査と、特別審査員の藪前知子氏(東京都現代美術館学芸員)による審査を経て、応募総数326件のなかから次の5名による作品アイデアが入選となりました。
浦上真奈 《浮かびながら結ぶ》(仮題)
津川奈菜 《開拓》(仮題)
西川 茂 《Sealed Building -Atomic Bomb Dome-》
平井亨季 《インク壺としての都市、広島/呉》
保泉エリ 《うつしとどめるために》(仮題)
特別審査員講評
リニューアルオープンした広島市現代美術館の新しい公募展、「Hiroshima MoCA FIVE 23/24」。326名の応募から選ばれた5名の作家のうち、4人が広島に関わりのある作家であったのは偶然だという。しかし、それぞれのライフストーリーを聞く限りでは、それは必然であるとも感じた。原爆投下という歴史的出来事が、その人生に濃淡の差はあれど交差する環境は、その人にしかない個別的な経験から普遍的なものへ想像を広げるという、芸術表現にとって、特別な土壌となっていることを想像する。
「リニューアル」という今回のテーマは、広島市現代美術館のリニューアルオープン記念特別展「Before/After」でも展開されていたように、人生におけるさまざまな再生や再開のモーメントから始まり、時間の概念の組み替え、さらには原爆投下による被害からの復興、近代も含めた既存の枠組みに対する見直し、未来への提言まで、大きな批評的な広がりを持っている。多様な問題意識を持った応募作品が寄せられる中で、広島市現代美術館賞と特別審査員賞のダブル受賞となった平井亨季の作品は、静謐な空気を湛えつつも、特にこのテーマがもたらす批評的射程を最大に広げるようなダイナミズムが感じられた。自分の手で引く一本の線が、交通、移動すること、広島と呉という二つの都市の関係、軍事都市としての成り立ちの違い、さらにはそうした差異を2都市にもたらした近代という枠組みへと、私たちの思考を導いていく。
津川奈菜の作品は、広島の移民の問題を扱い、新天地での再出発を描いているが、それまで自分が描いていたドローイングを、事後的に現れたテーマに展開している点で、「新しい風景」の現れが一層説得力のあるものになっていた。西川茂は、過去と現在、崩壊と再生が双方向に行き来するような時間の1点を、改修中の原爆ドームというモチーフに託し、強い印象を残す絵画を実現した。保泉エリは、かつて広島駅に存在し、都市開発によって失われた彫刻の記憶を、自らの手によって呼び覚まし、時間や物質世界を超えた芸術の存在を証明しようとする真摯な作品を提示した。蚤の市で見つけた古い写真に手を加え、死に結びついてきたこのメディアに、鑑賞者の風景の中で新たな命を与えようとする浦上真奈の作品は、記憶の隙間に浮遊するような写真の選択や展示方法に新鮮さがあった。
これら参加作家たちの作品はいずれも、破壊や死をもたらすような不可逆的な時間の流れに抗う力強さを持ち、全体で一つの優れたグループ展ともなっていた。世界で今現在も起きている様々な出来事を想起させつつ、現代美術とは、私たちがより良く生きるための作法、究極的には戦争を繰り返さないための思考上の模索なのだということに、改めて立ち返ることのできる経験だった。
藪前知子(東京都現代美術館学芸員)
記録集
主催者あいさつ
特別審査講評
展示風景
作家/作品
浦上真奈
津川奈菜
西川茂
平井亨季
保泉エリ
資料
実施経緯
広報物
開催概要
スケジュール
これまでの公募展について