Story whaling

立ち去りがたく美しい、居心地のいい空間ができていました。身を浸し、ゆっくりと滞留していると、鯨と人々とのありふれた歴史と親密な対話が、じんわりと身にしみてきます。

横川創苑で開催中(~1/11)の是恒さくらさんの個展「Story whaling」は、「交わるいと」との連動企画(オープンリサーチ・プロジェクト/ORP)の一環でもあります。布に刺繍された作品にはたしかに表と裏があるのですが、表も裏も同じように魅力的で、というよりも見ているうちに、私が見ているのは表でもあり裏でもある(あるいは表でも裏でもない)いわば表と裏の「あいだ」であることに気づかされるのです。

あいだとは、表と裏とが切り離された間隙ではなく、むしろ表と裏とが相対(あいたい)して生まれる睦まじい場であります。とすれば、布がまさしく「あいだ」にあり、是恒さんが綴ろうとしているのが鯨と私たちとの「あいだがら」であることが、私たちの腑におちてきます。

彼女が取り組むOrdinary Whalesというプロジェクトには、相当のタフネスとバイタリティと知性が必要となるはずです。しかしその手から生まれた作品は、いつまでも、そこにそっとあるような繊細さとやさしさに溢れていました。展示会場に降り注ぐ、まるで光のように。

http://souensouso.com/archives/1123

 

2017年12月28日(木)

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