気配と存在

会場で掲示している解説パネルとともに、展示の紹介を少し。まず最初は、上原美智子さんと平野薫さんの展示について。

 

気配と存在

解かれた布と、織られた布があります。

衣服や布地を解き、再構成して作品をつくる平野薫は、自身の制作を特徴づける言葉として「気配」を口にします。平野の手によって一本一本の糸にまで解かれた作品は、とても繊細で、頼りなげなく見えますが、同時に言いしれぬ気配を周囲に漂わせています。平野がドイツで作品を発表した際に、「気配」を直接に表すドイツ語がなくて困ったというエピソードが、興味深く反芻されます。

上原美智子は、ときに蚕(かいこ)が吐きだしたそのままの状態の糸を使って、極薄の布を織ります。極限にまで細いその糸は、目で捉えることすら困難で、機(はた)にかけて織ってもすぐに切れてしまいます。上原が「虫/無私(むし)」の心持ちになって、機と身体のリズムを合わせて織りあげた布は、素材である糸そのものの尊さや、蚕といういのちの存在をも感じさせるのです。

 

上原美智子 展示風景

写真は上原美智子さんの作品の展示風景。織られた布が並ぶなか、奥には織られていない赤い糸のままの「作品」が展示されています。上原さん自身が、織らない美しさがあることを改めて実感するに至った軌跡でもあります。

本日12月26日が年内最後の開館日です。年明けは1月2日から開館し、14時からは私竹口のギャラリートークもあります。初詣がてらお越しいただければうれしく思います。みなさま、どうぞ良いお年を。

2017年12月26日(火)

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