【展示紹介 01】気配と存在

上原美智子 photo: Masakazu Ohnishi
会場で掲示している解説パネルとともに、展示の紹介を順番に。まず最初は、上原美智子さんと平野薫さんの展示について。
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気配と存在
解かれた布と、織られた布があります。
衣服や布地を解き、再構成して作品をつくる平野薫は、自身の制作を特徴づける言葉として「気配」を口にします。平野の手によって一本一本の糸にまで解かれた作品は、とても繊細で、頼りなげなく見えますが、同時に言いしれぬ気配を周囲に漂わせています。平野がドイツで作品を発表した際に、「気配」を直接に表すドイツ語がなくて困ったというエピソードが、興味深く反芻されます。
上原美智子は、ときに蚕(かいこ)が吐きだしたそのままの状態の糸を使って、極薄の布を織ります。極限にまで細いその糸は、目で捉えることすら困難で、機(はた)にかけて織ってもすぐに切れてしまいます。上原が「虫/無私(むし)」の心持ちになって、機と身体のリズムを合わせて織りあげた布は、素材である糸そのものの尊さや、蚕といういのちの存在をも感じさせるのです。

平野薫《無題-産着-》(部分) photo: Masakazu Ohnishi
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