布をめぐる思考

手元に2冊の洋書があります。ともに布で装幀された、味わい深いものです。1冊は1998年から99年にかけてニューヨーク近代美術館などで開催された展覧会Structure and Surface: Contemporary Japanese Textiles のカタログ、もう1冊は2016年から17年にかけてクーパーヒューイット・スミソニアン・デザインミュージアムで開催された展覧会Scraps: Fashion, Textiles, and Creative Reuse のカタログです。

前者は、現代日本で独創的な布を生みだしている作家やデザイナーに焦点を当て、その彼ら彼女らの布を6つの造形的、技法的特徴から分類して紹介しています。約20年前の展覧会ではありますが、布という物質を立体的に捉えようとしたその視点は決して色褪せず、紹介されている布は今も変わらぬ美しさを誇っています。

後者はより今日的な社会意識を反映した、とても興味深い展覧会です。ファッションの文化やテキスタイルの歴史のなかに再利用、再生の精神を見出し、未来への希望へとつなごうとしています。scraps(切りくず、切れ端)が布へと生まれ変わるさまは、息をのむことでしょう。

この両方の展覧会に参加されているのが須藤玲子さんです(MoMaの展覧会には上原美智子さんも参加されています)。須藤さんは自身を作家/芸術家としてではなく、あくまでも「デザイナー」として位置付けています。しかしそれゆえにこそ、布の本質にも時代の感受性にも応じた美しくも刺激的な布を思考し、生みだすことができるのかもしれません。

2017年08月26日(土)

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