佐賀の染色文化

佐賀大学美術館にて「佐賀の染色文化」という展覧会が開催中です(〜10月9日)。そこで鈴田滋人さんの作品が2点、さらに父親であり鍋島更紗を現代に蘇らせた鈴田照次の作品も2点見られるというので、足を運んでみました。着物や帯だけでなく、お二人のスケッチや、そこからデザインがつくられていくプロセスが展示されていたので、かぶりついて見てきました。

https://museum.saga-u.ac.jp/exhibition/505

見ていると、やはりそのたび毎に発見があるものです。チラシに掲載されている作品《儚花樹》は9月20日からの後期に展示されるそうで、今回実際にまみえることができたのは《間の空》と《紫宴》でしたが、この《紫宴》は読んで字のごとく紫が舞い踊っているような揺らぎが心地良い作品でした。

http://www.nihonkogeikai.or.jp/works/613/840/

たとえば画像で見てしまうと、その揺らぎはリズミカルに配列されている紫色の文様や、裾から肩にむかってゆるりと上昇していく紫色の、地にも図にも見えてしまう使い方に特徴付けられているように感じられるかもしれません。それももちろん的を得ているのですが、しかしそれよりも重要なポイントが、画像では識別することのできないじつは細部にあることが実感できました。

紫色の小さな花をつけた草が群生している光景に、鈴田さんはなにかいのちそのものが舞い踊るような生命感や色気のようなものを感じられたのでしょう。その光景をスケッチし、自身にもたらされた感覚の核を抽出するように、スケッチの抽象化を進めながらデザインをつくりあげていきます。そのなかで、おそらく長く伸びた草が勢いよく交差している様子が、あるいは風に吹かれて揺らぎ震えている様子が、黒い線で表現されるようになっていきます。すべての線が円弧を描きながら、上下左右と交わっています。しかしその円は正円ではなく、すこしゆがんだ円なのです。それによって傾きやズレが生まれ、全体を遠くから見たときの静かな印象とは異なる細かく震えるような揺らぎを、近くから見たときに感じるようになるのです。

それどころか、人間の身体というのはおもしろいもので、遠くから見たときに視覚的には認識できていないはずのその揺らぎを、じつは最初から感受してしまっているのではないでしょうか。

この厚みにこそ鈴田滋人さんの仕事の本領があり、鈴田さんのデザイン(文様)は「近く」と「遠く」のあいだにこそ生まれ、広がるものなのです。

2017年09月07日(木)

ページのトップへ戻る