開催中

特別展
ティンティン・ウリア:共通するものごと

2024年9月21日(土) — 2025年1月5日(日)

Fallen [still], 2011
Courtesy of the Artist

ティンティン・ウリアの芸術的実践と研究に大きな影響を及ぼしてきたのは、民族的なマイノリティである中国系バリ人である自身の出自、さらには、1965-66年に起こったインドネシア大虐殺のときに行方不明となった祖父の存在です。幼少期から差別を受けてきた経験をもつウリアは、人々が作り出した境界と、その境界を維持するために人々が繰り広げる戦争に関心を抱き、多領域にわたるインスタレーションや映像作品を通して、こうした問題を伝えてきました。ウリアは、個人的な体験に立脚した芸術的実践を通して、私たちの身の回りにあるものごとが、美的要素を獲得することで、人々をつなぐ「共通するものごと」になり得ることに次第に気づくようになります。現在、こうした美的オブジェクトがいかに社会的・政治的変革に結びつくかを調査するプロジェクトを進めています。
日本での初個展となる本展では、比較的初期から現在に至る作品を紹介します。個々の記憶を含む個人的背景が、いかに集団的な行動や、他者との社会的繋がりへと変容し得るのか、という点に着目するウリアの芸術的試みの変遷を、作品を通して体験する機会となります。

展覧会チラシ

作品紹介

(Re)Collection of Togetherness—stage13, 2024, ongoing since 2007
Photo: Marisa Srijunpleang
Courtesy of the Jim Thompson Art Center for the exhibition Nomadic

(Re) Collection of Togetherness[一体感の集まり(回想)]

2007 年以降、段階的に形を変えながら発表されてきた、手作りのパスポートを使用した作品。本作で使用される、地球上のあらゆる国の複製パスポートは、ウリアのコレクションとして増え続けます。世界の国境は絶えず変化し続けるため、集める行為に終わりはありません。また、パスポートの一部のページには、押しつぶされた蚊と血痕が表されています。所有さえできれば、国際移動を可能にするパスポートは同時に、自らが選ぶことのできない帰属の問題、種類(国籍)次第では、国境を越えられない可能性を孕むことを示唆します。

Memory is Frail (and Truth Brittle) [detail], 2019 Courtesy of the Artist

Memory is Frail (and Truth Brittle )[ 記憶は脆弱(そして真実は壊れやすい)]

100 枚以上のドローイングからなるインスタレーション。空間(地理における)と時間(歴史における)の表現が、ループする物語として仕立てられます。ここではウリアの個人的な記憶と、さまざまな視覚芸術(映画等)から引用された、他者による記録とが交差し、世界に対する私たちの理解がいかに視覚的に構築され、記憶を通して記録されるかを問います。また、往々にして断片化される記憶を通して、現実がどのように形成されるのかを検証する試みでもあります。

Liminal Death, 2023
Courtesy of the Artist

Liminal Death[境界上の死]

ウリアは「移動」のシンボルのひとつとして「蚊」を取り上げ、それはしばしば作品に登場します。本作は蚊の変態に注目した作品です。彼女が「境界上の死」と呼ぶのは、蚊の幼虫が水面で、蛹殻から羽化する瞬間に起こる死のこと。羽化中の状態でエタノールの中で保存されたこの蚊は、1965 年にインドネシアで消息を絶ち、帰らぬ人となった、ウリアの祖父の存在と重ね合わされます。誰もが確信することのできない祖父の死は進行中であり、未完、つまり境界上の死を意味するのです。

Fallen [still], 2011
Courtesy of the Artist

Subtext - after Kawara's Title, 1965, 2019
Installation view at Van Every/Smith Galleries of Davidson College, NC, USA, 2019
Photo: Gordon Ramsey
Courtesy of the Artist

Absence in Substantia: Density [detail], 2023
Photo: Christian Capurro
Courtesy of the Artist

Liminal Death, 2023
Courtesy of the Artist

Some Memory Unfurls [detail], 2024
Courtesy of BAIK ART

Memory is Frail (and Truth Brittle) [detail], 2019
Courtesy of the Artist

基本情報

会期
2024年9月21日(土) — 2025年1月5日(日)
開館時間
10:00–17:00

※入場は閉館の30分前まで

会場
広島市現代美術館 展示室B-1
※11/4まで展覧会に関連したオープン・プログラムを展示室B-3で開催
アクセス
休館日
月曜日(ただし9/23、10/14、11/4は開館)、9/24(火)、10/15(火)、11/5(火)、年末年始(12/27—2025/1/1)
観覧料
一般1,100円 (850円)、大学生800円 (600円)、高校生・65歳以上550円 (400円)、中学生以下無料
※( )内は前売り及び30名以上の団体料金

【前売券】
オンラインショップ「339」
チケットぴあ〈Pコード 687-042〉
※販売は9月20日(金)まで
※広島市現代美術館の受付でも販売しています
主催
広島市現代美術館
後援
広島県、広島市教育委員会、中国新聞社、朝日新聞広島総局、毎日新聞広島支局、読売新聞広島総局、中国放送、テレビ新広島、広島テレビ、広島ホームテレビ、 広島エフエム放送、尾道エフエム放送
協力
BAIK ART、Milani Gallery
支援
University of Gothenburg (THINGSTIGATE, 101041284, European Research Council)
割引
【文化の日】11月3日:全館無料

県美×現美×ひろ美 相互割引

関連イベント

Dos Cachuchas, 2018 —Teaser

アーティスト・プロフィール

Photo: Daris Jasper/Culture Saving

ティンティン・ウリア

1972年、インドネシア、デンパサール生まれ。オーストラリア、イギリス、スウェーデンを拠点に活動。国際的に活躍する学際的なアーティストで、HDKヴァランド芸術デザインアカデミー(イェーテボリ大学、スウェーデン)の上級研究員。テキスト、映像、サウンド、絵画、ドローイング、ダンス、インスタレーション、パフォーマンス、公共介入などを通して、社会的、地政学的な国境を越えた複雑なパワー・ダイナミクス(権力の力学)をインターフェイスとして探求し、実践的かつ概念的にこれらのテーマに取り組んでいる。最近の個展に「ティンティン・ウリア:秘密」RMITギャラリー(メルボルン、2023)、「ティンティン・ウリア:開示」Baik Art(ジャカルタ、2023)がある。

https://tintinwulia.com/
https://linktr.ee/tintinwulia

アーカイブ

展覧会カタログ

予約販売受付中

価格|2,600円+税
仕様|A4判変型、114ページ
言語|日英バイリンガル
アートディレクション|野村勝久(野村デザイン制作室)
発行|広島市現代美術館

目次

カラー頁
展覧会の展示風景写真

モノクロ頁
寄稿テキスト
ティンティン・ウリア(本展出品作家)
アリエル・ヘルヤント(インドネシアの歴史家、文化批評家、AAH名誉教授)
カレン・ストラスラー(人類学者、CUNY大学院センター教授)
デボラ・ゴードン(生物学者、スタンフォード大学教授)/インタビュー
ヴィンセント・ベヴィンス(ジャーナリスト)/インタビュー
角奈緒子(広島市現代美術館学芸員)
 
※内容は変更になる可能性があります

展示風景

イベント・カレンダー

開館時間10:00-17:00
TEL082-264-1121