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コレクション展 2024-Ⅱ
ハイライト+ リレーションズ[ゲストアーティスト:中西紗和]
中西紗和《はんげん―休日―》2010 個人蔵
本展では、当館コレクションの特質に親しんでいただくとともに、関連するテーマに沿った内容の展示を合わせて紹介します。第1室から第3室にかけては「ハイライト」として、それぞれの部屋に添えられたキーワードを通して収蔵作品をご覧いただきます。第4室は「リレーションズ」と題し、展示内容をコレクションに限定せず、当館の収集方針や収集された作品、あるいは、広島という地域などと関連したコレクション展示の延長線上に位置付けられる企画を実施していきます。本展では身の回りの生活用品や生物をモチーフに制作している彫刻家・中西紗和をゲストアーティストに迎えます。
ハイライト
◯作家とスタイル
作家たちは、それぞれの探究をとおして自身の世界を創り上げていき、独自の表現スタイルをつかみ取っていきます。そんななか、ひと目見てその作家のものと分かるような外見上の特徴や、独自の制作方法や作品づくりのシステムを備えたスタイルにたどり着いた作家たちもいます。とりわけ作風がわかりやすい形で表れている作品をご覧いただきます。
◯保存、残すこと
あらゆる素材は環境の変化や時間の経過とともに劣化が進みます。とりわけ、従来とは異なる技法や劣化が早い素材が使われる場合、もとの状態を維持することはより困難になります。例えば、メディアアートは、再生機材の故障、あるいは生産終了などによって展示が不可能となる問題を抱えています。ここでは、現代美術館が直面しているさまざまな作品保存の課題について、さらには、美術館が作家とともに作品保存の新たな方法を探る実践についてご紹介します。
◯広島/ヒロシマ
被爆地としての特質を意識して語られる際、広島はしばしばカタカナで「ヒロシマ」と表記されます。当館の収集方針のひとつに「『ヒロシマ』と現代美術の関連を示す作品」があり、「ヒロシマ」をテーマとした制作委託による収集も行ってきました。広島/ヒロシマという地域性に関連付けながら生み出された作品を中心に展示します。
◯《アーチ》のメンテナンス
当館の向かいには、ヘンリー・ムーアによる高さ約6mのブロンズ彫刻作品、《アーチ》(1963-69/1985-86鋳造)が立っています。この秋、本作のメンテナンスを実施し、その方法や様子について随時お伝えします。
出品作家(※展示予定順)
横尾忠則、アンディ・ウォーホル、クリスト、河原温、阿部展也、たべけんぞう、杉浦 邦恵、サム・フランシス、岡崎乾二郎、山本圭吾、石内都(10/20まで)、吉原治良、中井恒夫、川俣正、田中功起、竹村京、山本正道、圓鍔元規、ナンシー・スペロ、オノ・ヨーコ、村井正誠、本田克己、殿敷侃、松本英一郎、若林奮、フィリップ・キング、丁昌燮(チュン・チャンスプ)、島州一、白髪一雄、芥川永、山本富章、ジョージ・シーガル、淀井敏夫、アルベルト・ジャコメッティ、アルナルド・ポモドーロ、ジャン・アルプ、クルト・シュヴィッタース、井上武吉、三木富雄、ヘンリー・ムーア
リレーションズ
ゲストアーティスト:中西紗和
鋳造とは、鋳型に溶かした金属を流し込み、冷やし固めて造形する制作方法です。ここでは、当館のコレクションから鋳造でつくられた作品や関連する作品を選び、それらを展示するのに加え、中西の鋳造制作のプロセスや道具を紹介し、さらに中西自身の作品を展示することで、鋳造をめぐる豊かな世界をご覧いただきます。
ブロンズと生活のあいだ
ブロンズというと、公共空間に設置されるモニュメンタルな歴史的人物像や裸体像をイメージするかもしれません。中西紗和によるブロンズ鋳造作品のモチーフや制作過程は、日常生活や私的な記憶と深く結びついています。例えば《in fuse―in ward》(2013/2024)は、自宅の湯船に入りながら手びねりでつくったワックス原型にもとづく作品で、それぞれのブロンズに日々の体験や考えの痕跡があらわれていると言います。さらにその作品のための台座には、原型用の材料であるワックスが使われています。変化しやすく、鋳造前に溶けて消失するワックスは、中西にとって、記憶の器としての身体を想像させるものでもあります。この展示では、ワックスや砂といった制作過程で使用される素材をとりいれた作品や、日用品をモチーフにした作品、身近な生物を独自の視点で捉えユーモアにあらわした作品など、中西の生活のなかで生まれた様々な表現をご紹介します。
ヘンリー・ムーア《アーチ》のメンテナンス
高さは約6メートル。当館が所蔵するなかでも最大の彫刻作品です。もともとは1969年につくられた作品ですが、当館が建設されるにあたって新たに鋳造され、1987年に設置されました(当館が開館したのは1989年)。
このたび、作品の保存・修復をひとつのテーマとした「コレクション展2024-Ⅱ」の会期中に、設置されてからはじめての全面的なメンテナンスを実施します。足場を組んでの本格的な作業です。ブロンズ彫刻や作品修復に関心を持っている方はもちろんのこと、多くの方にまたとないこの貴重な機会を目撃してもらい、見守ってもらえることを期待しています。
場所|比治山公園内「ムーアの広場」
日程(予定)|
11月5日 足場設置
11月6日—11日 メンテナンス作業(有限会社ブロンズスタジオ)
11月12日 足場解体
※見学自由、作業時間未定
イギリス、キャッスルフォード生まれ。第一次世界大戦にて従軍した後、リーズ美術学校および王立美術学校で彫刻を学びました。当時の前衛美術の影響を受けるとともに、プリミティブ・アート、そして石や動物の骨といった自然の中で生成される形態にもつよく惹かれ、有機的な曲線によって構成される抽象彫刻を制作しました。1933年にはグループ「ユニット・ワン」を結成、国際的な活躍を始めます。第二次世界大戦中は、従軍美術家としてデッサンによる「防空壕」シリーズを制作、戦後は世界各地で野外彫刻を手がけました。
1962年に高さ約11センチの《大きなトルソ:アーチのためのマケット》を手がけたムーアは、翌年に約2メートルの大きさの《大きなトルソ:アーチ》を完成させ、その後約6メートルに拡大する機会を得て、1969年に《アーチ》を完成させました。当館の作品は、1985—86年に当時の西ドイツで鋳造され、広島に運ばれてきたものです。
関連のコレクション
基本情報
※入場は閉館の30分前まで
アクセス
※( )内は30名以上の団体料金
毎月第3日曜日:コレクション展無料
【文化の日】
11月3日:全館無料
関連イベント
ゲストアーティスト・プロフィール
中西紗和(なかにし・さわ)
1985年、東京都生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻彫刻研究領域修了。博士号(美術)。ブロンズを素材とした鋳造技法によって、身の回りにある日用品や生き物をモチーフとした作品を制作している。近年の主な展覧会に、「泉屋ビエンナーレ 2021 Re-sonation ひびきあう聲」(泉屋博古館、京都、2021)、「個展:PEEK INTO THE ATELIE PROJECT Vol.1 -Terrarium-」(CREATORE With PLUS、広島、2022)、「なつやすみのAGm『美術のあじわい?さがし』+10周年記念コレクション展」(アートギャラリーミヤウチ、広島、2023)など。
https://sawanakanishi.com/
@_wasawasa_
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