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西 雅秋展
西雅秋(1946年、広島県生まれ)は、1980年代前半より、野外彫刻展などを中心に活動を始め、大地に掘った溝を鋳型にした作品や、屋外の木に太い鉄棒を渡した作品など、自然と深く関わった作品を製作してきました。87年頃からは、鉄の原型を水中、地中、大気中に放置し、自然の作用によって生じる変化を留めた作品を発表、これらの原型は現在も自然の中に置かれ、時間の流れを刻んでいます。また鉄の原型をブロンズに鋳抜き、両者を並べて置くことで、腐食によって朽ちていく鉄と自らの姿を重ね合わせた作品も製作しています。
鉄は時代の要求に合わせ、形と意味を変化させます。古くから日常の道具として人間の生活を支えてきた鉄は、戦争時には武器や砲弾にその姿を変えてきました。第二次世界大戦では原爆という鉄の塊となって多くの人命を奪いました。その鉄が今日では原発の冷却パイプとして用いられています。作家にとって鉄の歴史に目を向けることは、人間の歩んできた歴史について考えることであり、自らの出生地「ヒロシマ」に深く関わることでもあるのです。
最近では、二宮金次郎の像や骨董屋に並ぶ品々など、時代を経て意味を失った近代の遺物を石膏で型取った作品を制作しています。彫刻素材としては中途のものとして使用されることの多い石膏は、鉄とは異なり、それ自体は時間や意味を持たない物質です。その石膏の無垢な白さが、かえって原型の持つ時間と意味を鮮明に映し出してみせるのです。それらは最終的に破壊されますが、粉々になった破片は、あらゆる意味の混在する世界の一部のようにも感じられます。
本展では、現在も自然の中に放置されている作品のうち、代表作である第15回現代日本彫刻展の大賞受賞作品など鉄による大作2点をはじめ、五右衛門風呂や原発の冷却パイプなどをもとにした鉄とブロンズの作品11点を展示します。また今回の石膏による作品は、人間の信仰にまつわる品々を大量に型抜きしたものが使用されます。鉄の赤と石膏の白の鮮やかな対比の中に、西雅秋の全体像を浮かび上がらせ、今日の彫刻の可能性を探ります。
基本情報
※入場は閉館の30分前まで
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